理事長挨拶


特定非営利活動法人

杉並介護者応援団  
理事長 北原 理良子

 

はじめに 
杉並介護者応援団(以下、応援団)は地域に在住している家族介護者を「お互い様!」の気持ちで地域住民が支え合える介護者支援活動を継続しています。 
家族介護者が日常の介護生活で不安や苦悩を一人で抱え込まないで吐き出せる場である「介護者の会」(以下、会)の運営継続を可能にするため、「応援団介護者サポーター」(以下、サポーター)は介護者に寄り添って日々奮闘しています。 

「聴いて聴いて!誰もこの大変さを分かってくれないのよ!」「介護保険?ケアマネ?・・と言われてもどうしたらいいの?」等、会に参加される介護者が抱える問題は様々です。 
「ワァッ!」と号泣することで背負った肩の荷を少し下せる人、「この苦しみは私だけじゃないのね、皆さんに分かって頂けて嬉しい」と笑顔が取り戻せる人等、会で自分の悩みを話し他の介護者との会話を聴くことで次第に自分の心の整理が出来るのも会の大きな働きです。 

しかし全ての介護者が会に参加することで問題解決に至る訳ではありません。 
家族やサポーターだけでは解決出来ない問題は専門職に繋げることもあります。 
取り分け、会の中での会話等から「ひょっとして虐待?(不適切な対応かも知れない)」「次回の参加までには不適切な対応になってしまうのでは?」と思われる現状が見えています。 
それは普通の生活をしている家族介護者の誰もが介護虐待に陥ってしまうリスク要因を持っていることです。決して特別な家庭でもなければ非情な性格の家族でもない、優しい気持ちを持って一生懸命、家族のために介護をしている人達です。 
そして社会の変化に伴い介護者の形態も変化しており、老々介護・認々介護・シングルの娘や息子・20歳代から介護者になった若者・多重、連続介護状態になっている方々等様々です。 

この様な家族が何故介護虐待に陥るのかを会の参加者から分析してみると、原因のひとつには認知症や虐待に対する知識や理解が不足であること、2つ目の原因は会に繋がっていない介護者が孤立状態になっていることが分りました。 
介護ストレスを抱え、孤立して、ややもすると介護鬱状態になっている介護者自身が気付いていない要介護者に対する虐待を会での会話や態度から他の介護者やサポーターが気付き、専門職に繋げることで最悪の事態を回避できています。また、介護者同士で共感し合い心の交流を重ねることで次第に孤立から脱却し、気が付けば虐待を回避できている介護者もいます。その上「誰でも介護虐待をしてしまう」ことを知っていることで、最悪の虐待状態に陥る一歩手前で「あっ、皆と同じで私も虐待しそうだ」と気付き、思い止まれることも分かってきました。 

「虐待!」・・・この強烈な響きを持つ言葉を正面から打ち出すことは、時として介護者を傷つけたり憤慨させたり、会に参加されなくなるのでは等の迷いを感じながらも、介護者支援をしている我々が素通り出来ないとの思いに至りました。 

そこで認知症の理解を含め、何が虐待に当たるのかを認知症サポーター養成講座で実施している出前模擬演技(寸劇)を提供しながら、区民や専門職の方々には勿論のこと小学生や中高生の子供達に対しても実施して、市民目線での啓発に努めました。 
更に介護者対象に実施したアンケート調査から虐待に至る不適切な介護事例や対応を拾い上げ、整理分析して集めた生の声を皆様に届けられるように冊子にすることができました。 
この取組は行政的な虐待発生後の対応ではなく、虐待発生前の予防に視点を置き、市民レベルの視点から介護者と要介護者の権利を擁護しながら普及啓発が行われたことに大きな意義があったと感じております。 
まだまだ不十な調査ではありますが、今後も応援団は市民目線の軸を崩すことなく介護者と介護家族の声に耳を傾け、更なる啓発活動に取り組んでまいりたいと思います。 


北原理良子(きたはら りらこ)

プロフィール

 現職

   ・NPO法人杉並介護者応援団理事長

   ・杉並ボランティア・地域福祉推進

    センター運営委員

   ・杉並社会福祉士会運営委員

   ・杉並区社会福祉協議会評議委員

   ・杉並区生活支援体制整備連絡協議

    会委員

 

 

 

 

  経歴

   ・平成5年、在宅ヘルパーとして高齢者

    支援活動を始める。介護の悩みや不

    安を抱えた介護家族からの相談の多

    さに驚き、54歳で社会福祉の学習を

    開始。56歳で社会福祉士となり、地

    域高齢者の見守りボランティアをし

    ながら相談対応の学習を始める。

 

   ・平成17年    

     杉並区の介護者応援ボランティア

     「サポーター」となる

   ・平成18年4月 

     任意団体「杉並介護者応援団」を

     設立

   ・平成21年2月 

     NPO法人となり現職

   ・平成23年4月 

     杉並区立ゆうゆう高円寺東館(敬老

     会館)の管理運営を杉並区から受託